日本各地に点在する「性神」を巡る旅。
その第1回目の記事は、性神伝承のなかでも特に有名な、道鏡に由来のある金精神社巡りについて取り上げることとする。場所は群馬県片品村に位置するが、この小さな祠へアプローチするには、国道120号、通称ロマンチック街道にある金精トンネル栃木側出口から若干の登山を経なければならない。そしてその山道はちょっとだけ険しいので、軽装での登山には注意を要する。トンネル付近の駐車場に車を止め、そこから延びる登山道から30分程度の山道を登る。今回はその山道を実況的に解説したいと思う。20歩ごとに一枚ずつ写真を撮影しているので、距離感の参考にして欲しい。
金精神社(wikipedia)
駐車場にある登山道の説明看板。金精神社についてはあまり情報がない。
登山道入り口付近。
看板が心許ない。
最初は土留めのコンクリート壁の縁を歩く。
ごつごつした岩肌の道を上っていく。既に心が折れはじめる。
ロープは積極的に利用した方が良い。写真ではわかりにくいが、道中はそれなりに傾斜がきつい。
ゴツい道は序盤だけ。
数日前の土砂降りで土砂崩れ的なものがあったようだ。登山道の途中が一部崩壊していた。崖側に滑り落ちると大怪我だろう。
この辺から森に囲まれる。
なんどでもいうが、ロープは使おう。先人の心遣いに感謝。
木々の根っこが階段になっている。
倒木もある。
階段の一段一段の蹴上げが膝下くらいまでの高さがあるので、体力的にかなりきつい。休み休み行くべき。
はしごを使って上っても良いし、これをよけて斜面を歩いても良いだろう。
ロープは(略。
徐々にではあるが、木立の生え方に変化が現れつつある。木が細く、散在するようになってきた。
途中に一カ所、案内が出ている。
ゴールに向かって一部下り坂のシーンがある。足場が悪いので注意。
前方になぜか中華風の祠が見える。残念ながらこれが目当ての金精神社である。
笹とアザミが足下に茂っている。
峠を登り切ったところ。いくつかの登山ルートの合流点なのだろう。
金精神社に到着。所要時間は片道30分くらいではないか。外観は神社というよりも寺院、それも道教の寺院とでもいうような外観である。(これってもしかして道教と道鏡を掛けているのか?)
金精神社内観。中央に50センチほどの陽石が据えられている。天然石を砕いて整形したようなつくりである。カリの部分が生々しい。
内部は思っていた以上に荒れておらず、度々参拝者がきていることが推察できる。この手の神社には珍しく南京錠で扉が封鎖されておらず、扉が風雨で開くことがないように置かれた石をよければ内部を見ることが可能である。祠自体はコンクリートブロックによる組積造で、外側を漆喰で塗り込めている。外側の漆喰は一部崩落している。
場所的にもよほど性神信仰に興味のある人か、あるいはたまたま通りかかった登山客ぐらいしか参拝者は訪れないだろう。たまたま通りかかったぐらいでは、この味気ない建物の中に何が入っているかなんて、わざわざ扉を開けて確かめることもないだろう。そんな寂しさの中に、道鏡が残していったとされるご神体が安置されているのだ。何とも切ない。
この神社らしからぬ神社は、そもそもコンクリートブロックの組積造である点も珍しいが、他の性神を祀る神社に比べて異なる点はといえば、水のわき出る泉や井戸、手水舎などが無いこと、山の稜線上に位置すること、祭りを行うための舞台(神楽殿や土俵など)がないこと、などがあげられる。
性神巡りをするにあたり避けては通れぬ場所――一度は行っておかねばならない場所――であるから行ってきたわけだが、なぜこんな場所にご神体が追いやられることとなったのか興味深い。