20111223

日本性神巡り - vol.2

日本各地に点在する「性神」を巡る旅。

その第2回目の記事は、いまだに性神信仰の影響が色濃く残り、原点ともいうべき場所である岩手県の遠野を巡ったときの事をレポートしたいと思う。この遠野巡りは私にとっては初めての「性神巡り」の旅であった。

遠野を訪れたのは2009年の夏のことであった。仙台で行われた建築学会での講演を終えて、その足ですぐにレンタカーを借りて岩手に向かった。途中で気仙沼にある石山修武の「リアスアーク美術館」に立ち寄るなどし、深夜に遠野駅前に到着、その日は近所の駐車場で車中泊し、夜を明かした。翌日はあいにくの小雨模様で、性神巡りをするにはちょっと足下が心許ない感じではある。

実はこの遠野巡り、事前にリサーチすることなく半ば思いつきではじめたものであった。したがって、最初はどういうところを探せばいいのか全く見当もつかなかったので、手当たり次第に神社や祠を地図から探し、片っ端から覗いて廻った。最初の2カ所くらいは普通の神社でまったく収穫がなかったが、3カ所目くらいでようやくたどり着いたのが「程洞金勢様」と呼ばれる程洞金勢稲荷である(写真1枚目)。

この祠には陰石と陽石、あるいはそれらを象った木造が安置されている。見たところ、真新しいものも見受けられるので、現地の人の中には変わらず信仰を続けている人がいるのかも知れない。境内は針葉樹と広葉樹の混じる斜面に設けられており、最寄りの道路からは少々山道を上がる必要がある。参道は坂道で、決して大きくはない鉄製の鳥居を途中でいくつかくぐると社殿と祠にたどり着く。社殿の方には特に何もなかったように記憶している。祠と社殿との間には清水の湧くところがあり、この日の天候のせいか、蕩々と水が流れていたのを記憶している。

境内にある杉の巨木は根本付近で二股にわかれており、分かれ目付近に注連縄が施されている。これは言うまでもなく女性器の隠喩であろう(写真2枚目)。

次に向かったのは「山崎金勢様」と呼ばれる陽石の祠である(写真3枚目)。山崎地区の集会所の駐車場に車を止め、そこから徒歩で向かうがこれは大した距離はない。おそらく自然石なのだが、もしかすると多少は人為的に手が加えられた形かも知れない。これも注連縄が施されている。

陽石を見学した後、車に戻る際に集会所の中を覗いてみて思わず喫驚した。こぢんまりとした御輿の上に、男根を象った「ご神体」らしきが鎮座しているではないか(写真4枚目)。その後方には祭の時の様子を写した写真が掲示されており、これを担いでいるのはどうやら地元の子どもたちのようである。まだ年端もいかない小学生の子供らがこれを担いで集落を練り歩く姿は、性神信仰がまだこの地域には根強く残り、大人らの狭隘な衛生化(サニタライズ)の手からこの文化が守られていることが推察できる。また、「山崎金勢さま音頭」が掲げられており、その歌詞は男女和合の明喩・隠喩がちりばめられている。

20111216

Archiduino Project - vol.22

建築系におけるArduino利用計画としての「Archiduino Project」。

日本建築学会の情報システム利用技術シンポジウムで「オープンソースハードウェアを用いたローコストワイヤレスセンサネットワークの開発と実装」と題して講演を行いました。これまでの「Archiduino Project」を7つのフェーズに分けて、それらについて簡単にまとめたものです。今回は特に小型化と低価格化に加え、行動と環境のセンシングデータを応用した行動推定について新規に紹介しました。この委員会の研究集会はいつも楽しいのでテンションあがりまくりでしゃべくりました(笑

先日のMTM07で販売したArchiduino基板についても、基板だけですが、希望の方に配布ししました。基板そのままでは使えませんので、せっかくですから自前で部品をそろえていただき実装してみて下さい。取扱説明書はこちら

せっかくなので有言実行と言うことで、ArchiduinoのEagleデータやFusion PCBにそのまま発注できる状態でのデータを公開したいと思います。ライセンスはGPL準拠でお願いしたいと思いますので、基本的に改変した場合は公開していただければと。さらには「もっとこうした方がいいよ」というアドバイスもいただければと思いますので、それはTwitterでお願いします。

- Archiduino Eagleデータ
- Archiduino Fusion PCB 発注用データ

Fusion PCBへの発注については、このデータをそのままメール送信していただければ大丈夫ですが、ファイル名を所定の形式に変更する事を忘れないようにして下さい。

20111205

Archiduino Project - vol.21

建築系におけるArduino利用計画としての「Archiduino Project」。

今回のMTM07では、私も参加させていただいている早稲田大学の「WIZDOM」メンバーらと一緒に出展しました。昨年度はブレッドボード上で構成するArduinoをほぼ原価で販売させていただきましたが、今回はPCBサービスを使って試作した「Archiduino」をこれまた材料込みのほぼ原価で販売させていただきました。時間の都合で5セットしか準備できませんでしたが、ありがたいことに完売となりました。(本当はもっと用意するはずだったのですが、もろもろの事情により発注が遅くなり、結局PCBから発送された基板が期日に間に合いませんでした。)

さて、そんな奇特な5名の購入者の方向けに、説明不足を補うための注意事項を以下に書き残しておこうと思います。

★はんだ付けする前の準備
・部品はすべて(XBeeチップ・ACアダプタ除く)同梱されておりますが、ご確認下さい。注意点としては、積層セラミックコンデンサが0.1uF(7本)と22pF(2本)のものがあります。22pFのものはクリスタル用です。抵抗は2本、1kOhmと10kOhmです。レギュレータは5V500mAのものと3.3V500mAのものがありますので、実装する際に注意して下さい。
・ATmega328Pを使っていますが、ブートローダは事前に書き込む必要があります。ブートローダの書き込みはこちらを参考にしてください。私も秋月の通称「秋月duino」を使用しております。はんだ付けしてからの書き込みはできない(はず)ですのでご注意下さい!ブートローダは一度書き込めば二度は必要ありません。スケッチのアップロードは後からでも出来ます。なお、スケッチのアップロードにはこちらのシリアルアダプタが必要です。

★はんだ付けをする際の注意
・はんだ付けの順番を間違えると実装できない部品が出てしまうので注意して下さい。特に裏面(XBee側)の1.27mmピッチの10pinソケットは、IC実装後には実装できなくなります。XBeeをつかってセンサーネットワークノードとして利用したいとお考えの方は、この点には特に注意して下さい。
・順序としては、最初に裏面の10pinソケットを実装し、表面の中央部分の部品から外側に向かって(ATmega328→DCジャック→22pF→16MHz→レギュレータ→0.1pF→47uF→10kOhm→0.1uF→1kOhm→LED→14pinソケット)実装していきます。隣の部品との間隔が狭いところがありますので、はんだの量に注意して下さい。
・レギュレータは2種類あり、REG1のプリントがある方が5V、REG2が3.3Vになります。
・クリスタル横の2つあるコンデンサは22pFです。
・電解コンデンサは両方とも47uFです。極性に注意して下さい。
・LEDは切り欠きのある方が基板内側です。

★使用上の注意
・スケッチのアップロードは上述したとおりです。XBeeチップを載せたままではアップロードできませんので、アップロードする際はお手数ですがはずしてください。
・アップロードする際、Arduino IDEのBoard設定は「Duemilanove」にしてください。
・マニュアルにもピン配置は記載してありますが、ATmega328Pの配置と同じ順番です。ただし、D0・D1pinはXBee用に使用しているので、XBeeを使う方はこれを使用できません。
・レギュレータ部分の発熱が80℃近くなります。通常の紙の着火温度は超えませんが、やけどなど気をつけて下さい。
・ACアダプタは9V1A程度のもので大丈夫です。12Vだと尚熱くなります。

現段階では以上です。質問はTwitterでお寄せ下さい。

追記:
・はんだ付けによるICの損傷を気にする場合は、28ピンのICソケットを使用して下さい。
・2つある電解コンデンサはそれぞれ秋月電子でレギュレータを購入する際に付属するものを使用していただいて構わないかと思います。その場合、47uFではないものになると思います。容量が変わったことで、厳密にどういう影響があるかまで私は知り得ないのですが・・・(^_^;)

20110829

日本性神巡り - vol.1

日本各地に点在する「性神」を巡る旅。

その第1回目の記事は、性神伝承のなかでも特に有名な、道鏡に由来のある金精神社巡りについて取り上げることとする。場所は群馬県片品村に位置するが、この小さな祠へアプローチするには、国道120号、通称ロマンチック街道にある金精トンネル栃木側出口から若干の登山を経なければならない。そしてその山道はちょっとだけ険しいので、軽装での登山には注意を要する。トンネル付近の駐車場に車を止め、そこから延びる登山道から30分程度の山道を登る。今回はその山道を実況的に解説したいと思う。20歩ごとに一枚ずつ写真を撮影しているので、距離感の参考にして欲しい。

金精神社(wikipedia)

駐車場にある登山道の説明看板。金精神社についてはあまり情報がない。

登山道入り口付近。

看板が心許ない。

最初は土留めのコンクリート壁の縁を歩く。





ごつごつした岩肌の道を上っていく。既に心が折れはじめる。


ロープは積極的に利用した方が良い。写真ではわかりにくいが、道中はそれなりに傾斜がきつい。








ゴツい道は序盤だけ。






数日前の土砂降りで土砂崩れ的なものがあったようだ。登山道の途中が一部崩壊していた。崖側に滑り落ちると大怪我だろう。

この辺から森に囲まれる。



なんどでもいうが、ロープは使おう。先人の心遣いに感謝。


木々の根っこが階段になっている。


倒木もある。




階段の一段一段の蹴上げが膝下くらいまでの高さがあるので、体力的にかなりきつい。休み休み行くべき。




はしごを使って上っても良いし、これをよけて斜面を歩いても良いだろう。

ロープは(略。




徐々にではあるが、木立の生え方に変化が現れつつある。木が細く、散在するようになってきた。

途中に一カ所、案内が出ている。



ゴールに向かって一部下り坂のシーンがある。足場が悪いので注意。

前方になぜか中華風の祠が見える。残念ながらこれが目当ての金精神社である。


笹とアザミが足下に茂っている。

峠を登り切ったところ。いくつかの登山ルートの合流点なのだろう。

金精神社に到着。所要時間は片道30分くらいではないか。外観は神社というよりも寺院、それも道教の寺院とでもいうような外観である。(これってもしかして道教と道鏡を掛けているのか?)

金精神社内観。中央に50センチほどの陽石が据えられている。天然石を砕いて整形したようなつくりである。カリの部分が生々しい。

内部は思っていた以上に荒れておらず、度々参拝者がきていることが推察できる。この手の神社には珍しく南京錠で扉が封鎖されておらず、扉が風雨で開くことがないように置かれた石をよければ内部を見ることが可能である。祠自体はコンクリートブロックによる組積造で、外側を漆喰で塗り込めている。外側の漆喰は一部崩落している。

場所的にもよほど性神信仰に興味のある人か、あるいはたまたま通りかかった登山客ぐらいしか参拝者は訪れないだろう。たまたま通りかかったぐらいでは、この味気ない建物の中に何が入っているかなんて、わざわざ扉を開けて確かめることもないだろう。そんな寂しさの中に、道鏡が残していったとされるご神体が安置されているのだ。何とも切ない。

この神社らしからぬ神社は、そもそもコンクリートブロックの組積造である点も珍しいが、他の性神を祀る神社に比べて異なる点はといえば、水のわき出る泉や井戸、手水舎などが無いこと、山の稜線上に位置すること、祭りを行うための舞台(神楽殿や土俵など)がないこと、などがあげられる。

性神巡りをするにあたり避けては通れぬ場所――一度は行っておかねばならない場所――であるから行ってきたわけだが、なぜこんな場所にご神体が追いやられることとなったのか興味深い。